魔法のコーヒー

近所にマホウコーヒーというかなりイカした喫茶店がある。

去年京都引っ越してから異彩を放つ外装に引き寄せられ入店したが最後、回数券を買い続け、70回近く足を運んでいる。

 

深煎りコーヒーと古いジャズと美味しいコーヒーゼリー

 

本を片手に端っこの席に座って1時間ほど滞在するのだが、その時間がなんとも居心地がいい。

そしてコーヒーは今まで飲んだことがないほど美味しく、五臓六腑に染み渡る。

一年ほど前の通い始めた時期に、是非とも家でもこのコーヒーが飲みたいと思いコーヒーの粉を買ったつもりが豆だったことがあった。

あれ以来、コーヒーセットを一式買い揃え、こだわりのドリッパーで日々マホウコーヒーの味を思い浮かべ首を捻りながらコーヒーを淹れることになる。

すっかり身も心も魔法のコーヒー色に染まりつつあるというわけだ。

 

転職したわけではないけれど、異動という形で淡路島から京都に引っ越したことでいくつも変化したことがある。

・近所付き合いが減った

・農作業をほとんどしなくなった

・生きていると実感し合えるコミュニティーが近くになくなった

・立派な家に住んでいる

・自炊が楽しい

・パンを焼くようになった

・ブラインドタイピングができるようになった

・毎日会社という場所に出社している

 

思えば今の場所に来た理由も酷く曖昧なものだった。

淡路農業団体が解散して行き場がなくなり、焦りから流れるようにたどり着いた場所だった。

 

大学4年の就活時に大切にしていた「生きている実感を持っていること」「感謝を忘れないこと」

この信念までも酷く曖昧なものになってきた気がする。

 

冷静に今考えればうちの会社のような労働条件はあんまりなので選びたくない。

気がついたら再就職して3年が経っていた。

 

そう、つまりは今、転職を考え始めている。

 

手始めに転職サイトに登録をしてみた。

エージェントとお話をしてみた。

求人情報をいくつかのぞいてみた。

 

結果、自分の希望が酷く曖昧であることに気がついた。

そろそろ考え直さなければいけない、自分の生きる場所を自分の意思で決めたいと思う。

ただ一つ、マホウコーヒーから離れたくないなと迷っていることを除いて前向きに動き始めようとしている。